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公開 May 20, 2023

著者 Solidigm

記事

SSD の可能性を最大限に引き出すソフトウェア・イノベーション

Ace Stryker、PC ハードウェア & ソフトウェア担当、製品マーケティング・リード

ソリダイムは 2021年12月の設立時、「ソリッドステート・ストレージの新たなパラダイム」を掲げ、業界が抱える難問の解決策を明らかにし、これまでにないユーザー体験を提供する新しい考え方を約束しました。そして今、ソリダイムはその約束を果たし続けています。

Solidigm Synergy™ ソフトウェアによって、コンピューター・ストレージの可能性を引き出す方法について、詳しくはホワイトペーパーをダウンロード、またはこのページを読み進めてご確認ください。

Solidigm Synergy™ ソフトウェア 2.0の基本原理、機能、ユーザーメリットの概要

数多くの革新的な機能によってソリダイムのクライアント向け SSD 製品を補完し強化する無償のソフトウェア・スイートとして Solidigm Synergy™ ソフトウェア 2.0 を発表したことで、ソリダイムはその約束を果たし続けています。 この新しいソフトウェア・レイヤーは、SSD とホストシステムの間のコミュニケーション・ギャップを埋めることで、最高レベルのハードウェアでも単独では提供できない卓越した応答性とパーソナライズ性を実現します。

Solidigm Synergy™ ソフトウェアのコンポーネント

Solidigm Synergy™ ソフトウェアがもたらすメリット

図1. Solidigm Synergy™ Toolkit と Solidigm Synergy™ Driver の基本仕様

ハードウェアとファームウェアのパフォーマンス向上

ハードウェアのイノベーション技術は、クライアント SSD の性能向上、大容量化、低コスト化への道を切り拓いてきました。例えば次のような進歩です。

  • NAND メディアの高速化と高密度化 (セル当たりのビット数)
  • PCIe インターフェイスの進化
  • ホスト・メモリー・バッファー (HMB

) など、アーキテクチャーの技術革新 同時に、ファームウェアの進歩はさまざまな形で製品の向上に貢献してきました。その 1 つが SLC キャッシング (静的実装と動的実装の両方) です。SLC キャッシングにより、SSD では確保されているドライブの一部に最近書き込まれたデータを保存することが可能となり、ユーザーが後から

再びそのデータが必要になった際に、素早くアクセスすることができます。 ソフトウェアが

必要な理由 従来のクライアント SSD は、あらゆる改善や改良が加えられてはいる

ものの、いくつかの重要な点において本質的な制限が依然として残っています。クライアント SSD は「1 台でどのような用途にも対応する」考え方に基づいていますが、ユーザーのタイプはさまざまであることから、自分にとって必ずしも最適であるとは限りません。例えば、同じ S

SD デバイスを使用していても、オフィスワーカーとゲーマーとでは、それぞれメリットを得られるストレージ設定は異なるはずです。

そして重要なのは、ハイエンドの SSD であっても、実際に何が格納されているのか、その中身を全く把握していないことです。SSD は論理ブロックアドレス (LBA) の観点からデータを識別しますが、それが写真なのか、テキストファイルなのか、あるいは音源なのかは全く認識していません。

SSD のパフォーマンスを最適化する Solidigm Synergy™ ソフトウェアの 3 段階のイノベーション

Solidigm Synergy™ ソフトウェアの戦略

そこで登場するのが、ソフトウェアです。具体的にはストレージドライバーと呼ばれるソフトウェアが、 ホストとストレージデバイスの間のギャップを埋めることで、これまでは不可能だった実用的なインサイトを SSD に提供します。 ソフトウェアがエンドユーザーにもたらすメリット このホワイトペーパーでは、ツールキットとドライバーの両方を含め、ソリダイムが最新の Solidigm Synergy™ ソフトウェアに組み込んだイノベーションと機能について詳しく説明します。 とはいえ、まずは重要な点から始めましょう。エンドユーザーにとってこのソフトウェアの機能すべてが重要と言えるのはなぜでしょうか?日常の作業や趣味に PC を使用する中で、ユーザー体験にどれほどプラスの影響があるのでしょうか? 結局のところ、ユーザーが PC で最も頻繁に行う操作において具体的なメリットがないのであれば、何を並べたところでマーケティング上の宣伝文句でしかありません。

Solidigm Synergy™ ソフトウェアのパフォーマンス指標 (PC 起動時間、リード速度) をグラフ表示

図3. Solidigm Synergy™ ソフトウェアのパフォーマンス指標

結論から言うと、どのタイプのユーザーにも特定の顕著なメリットがあります。ここでは、ユーザーを大まかなカテゴリーに分類し、それぞれのメリットについて順番に説明します。

常的なユーザー

  • ウェブ・ブラウジングから、Microsoft Office スイートなど生産性ソフトウェアでの作業まで、一般的な幅広いアクティビティーにPCを使用しているオフィスワーカーや学生などのユーザー。

ゲーマー

  • AAA ゲームの膨大なインストールや負荷の高い大容量アセットファイルの読み込みなど、頻繁にシステムを圧迫しているユーザー。

コンテンツ・クリエーター 

  • 写真、ビデオ、オーディオなど、大量のメディアを操作し、大小のファイルが組み合わされたリード / ライト混在のマルチタスク処理を頻繁に実行する、PC に独特のニーズを求めるユーザー。

1. 日常的なユーザー

PC の日常的な用途は、キーボードに向かうユーザーの数だけ、さまざまにあります。PC の起動、ウェブ・ブラウジング、軽めの生産性タスク (Microsoft Office アプリケーションを考えてください) などが含まれます。

この種のアクティビティーの場合、Solidigm Synergy™ ソフトウェアの機能の中では、SSD のキャッシュ領域 (ドライブの「高速アクセス」領域) へのアクセスを最適化する高速レーンが特に役立ちます。ストレージ容量がいっぱいになると発生しがちな PC の速度低下は多くのユーザーが経験するため、Solidigm Synergy™ Driver についての詳しい説明とあわせて、高速レーンのメカニズムについて深く掘り下げてみましょう。

高速レーンの主なメリットは、長期間にわたってドライブのリード性能の一貫性が保たれることです。その差は顕著に現れます。ソリダイムが実施した測定では、データがすでに半分入っているドライブで、QD=1 のランダムリード速度が最大 120% 向上しました。 [1]

 

さらに、ほとんどのユーザーにとって重要なもう 1 つの効果は、PC の起動時間の短縮です。システムの読み込みタスクが完了するまでじっと待っているのが好きなユーザーはいません。すぐにデスクトップを開いて、予定していた作業を始めたいと考えるものです。応答性の高いストレージの目的は、テクノロジーがユーザーの邪魔をせず、最大限の生産性を引き出すことにあります。

テストでは、Solidigm SynergyTM ソフトウェアをインストールしたシステムは、Windows のデフォルトのディスクドライバーを使用する同じシステムと比較して、電源オフの状態からの起動時間が最大 7% 短縮しました。 [5]

 

さらに、PC の全体的なユーザー体験の有用な指標となるストレージ・ベンチマーク・ツールがあります。高く評価されているツールの 1 つが PCMark 10 です。UL Solutions が提供するこのアプリケーションは、Microsoft Office や Adobe Creative Cloud スイートなど、広く使用されているアプリケーションの実環境ワークロードでの実行に基づいて (この点が重要)、標準化されたスコアを出力します。 PCMark 10 には、ストレージデバイスなど、特定のシステムリソースのパフォーマンスを測定する、テストのサブセットを提供しているというもう 1 つのアドバンテージもあります。これがこのツールのフルシステム・ドライブ・ベンチマークとクイック・システム・ドライブ・ベンチマークの背後にある考え方です。

ストレージ・ベンチマーク・ツールと称するツールのすべてが、実環境のユーザー体験を評価する際に同様に役立つわけではありませんが、PCMark 10 のストレージテストは、実際のユーザー体験を示すという点で最も適しているというのがソリダイムの見解です。

Solidigm SynergyTM ソフトウェアをインストールしたシステムは、同じ構成でもこのソフトウェアを使用していない場合と比較して、PCMark 10 のフルシステム・ドライブ・ベンチマークで最大 7% 高い結果を示しました。[6]

 

2. ゲーマー

PC ゲームの中でも、特に多額の予算が投じられる AAA タイトルや「ブロックバスター」ゲームでは、SSD の用途としてはかなり限定的ではあるものの、高度な厳しい数々の要件が SSD に課される傾向があります。ゲーミング・ワークロードは、初期インストール後、ディスクへの書き込みよりも読み込みの方が大幅に多くなりますが、これは直感的にお分かりいただけるでしょう。I/O 処理の大部分は、ゲームの起動、セーブ状態の読み込み、ゲーム内での新しいレベルの読み込みで発生します。

このようにゲーム・ワークロードのリード処理には、次のような傾向があります。

  • 大半がリード
  • 本質的にほぼシーケンシャル
  • ほとんどが非常に低いキュー深度 (QD)

Solidigm Synergy™ ソフトウェアのスマート・プリフェッチと呼ばれる新機能が役立つのは、まさにこの領域です。スマート・プリフェッチ機能は、上記のような十分に予測可能なデータストリームを検出し、ユーザー・アプリケーション (この場合はゲーム) から要求される前に、次のアイテムを連続して送り出すことで動作します。このようにして、転送サイズの小さい大量のシーケンシャル・リードを処理するゲームでは特に、スマート・プリフェッチによってレイテンシーが低減され、読み込み時間が短縮されます。

スマート・プリフェッチについて詳しく説明する後半のセクションでは、具体的なワークロードを取り上げ、この機能がPCゲームの特定の要求にどのように対応するかを見ていきます。

Solidigm SynergyTM ソフトウェアにより、特に転送サイズが小さい場合、QD の低いシーケンシャル・リードの大幅な高速化が可能になります。測定では、4KB で最大 350% の高速化が確認されました。なお、ゲームの読み込み時間に対する最終的な影響は、各タイトルがデータを読み込む方法によって異なります。[4]

 

3. コンテンツ・クリエーター

メディア制作にビデオ、オーディオ、写真などの素材を日常的に扱うコンテンツ・クリエーターには、極めて頑丈なストレージデバイスでさえも難しい、特有の要件が多く見られます。

プロジェクトのフェーズによって、リードよりもライトの方がはるかに多くなる作業もあれば、その逆の場合もあります。また、個々のプロジェクトの性質に応じて、小さい I/O 処理 (通常は本質的にランダム) が大量に発生することも、比較的頻度は少ないものの大サイズのシーケンシャル・リードやライトが必要になる作業もあります。 そのため、性能のあらゆるベクトルにおける小さな改良の積み重ねが、「応答性」の全体的な感覚や、1 日の作業を通して何度もわずかに体感するシステム動作の軽快さにつながっていきます。 その点から、動的キュー割り当ては、本質的にランダム処理が中心になるこのような作業で特に、リード性能とライト性能の両方を向上させる機能と言えます。この機能は、I/O 要求の完了に使用する CPU コアの数を動的に最適化することによって動作します。つまり、ほかのコアほどビジーではないコアがある場合、ドライバーが処理を再分配して、CPU のボトルネックを回避できるということです。

ソリダイムが実施したテストでは、動的キュー割り当てにより、Solidigm SynergyTM ソフトウェアなしで同じワークロードを実行する同じシステムと比較して、ランダムリード性能が最大 20% 向上しました。[2]

 

アプリケーションの起動は、ストレージ性能がユーザー体験を左右する最も一般的かつ最も重要なイベントの 1 つです。デスクトップ上のアイコンをクリックしてから、アプリケーションが読み込まれて使用できるようになるまでの間、起動画面だけが表示されたまま (あるいは何も表示されないもっと困った状況で) 待たされた経験は誰にでもあるでしょう。

プログラムの設計方法にもよりますが、Solidigm SynergyTM Driver の最適化の組み合わせは、アプリケーションのロード処理の多くにプラスの影響を与えることができます。1 つ例を挙げると、Solidigm SynergyTM Driver をインストールした場合、Windows のデフォルトのドライバーを使用した場合と比較して、Microsoft PowerPoint の読み込みが最大 14% 高速化されました。[3]

 

Solidigm Synergy™ Toolkit

このツールキットは、ユーザーが日常的に操作するソフトウェア・スイートの半分を占めています。そのため、ユーザー体験の向上を図るデザイン性に注力しました。Solidigm Synergy™ ソフトウェア 2.0 のリリースでは、すべてのツールとドライブレポート機能が直感的でアクセスしやすくなるように、クラス最高の UI の構築に多くの追加サイクルを費やして、Windows 版アプリケーションをゼロから再設計しています。

SSD のパフォーマンス指標とパラメーターを表示する Solidigm Synergy™ Toolkit のダッシュボード

図4. Solidigm Synergy™ Toolkit のダッシュボード

ソリダイムの SSD と競合の SSD 製品どちらを使用している場合でも、Solidigm Synergy™ ソフトウェアの機能セットに備わるメリットが得られることに変わりありません。ソリダイムは、自社製 SSD だけでなく、サードパーティー製 SSD へも、ツールキットのほぼすべての機能をオープン化することにしました。Solidigm Synergy™ ソフトウェア 2.0 における唯一の例外は、ソリダイム以外のドライブでは利用できないドライブのファームウェア仕様に依存する高速レーン管理です。

主要機能

ツールキットの機能の詳細については、Solidigm Synergy™ Toolkit ユーザーガイドをご覧ください。 ここでは機能の概要をまとめています。

Solidigm Synergy™ Driver

Solidigm Synergy™ ソフトウェアのユーザーに提供されるパフォーマンス向上の一部については、すでに説明しました。ここからはその仕組みについて具体的に見ていきましょう。

高速レーン (旧称:ホスト制御のキャッシング)

高速レーンは、1 セルに複数ビットを格納できる初代の SSD と同じくらい古くからある問題を解消します。このドライブと同時にシングルレベル・セル (SLC) キャッシュが登場しました。NAND キャッシュのアーキテクチャーについては、このホワイトペーパーでは取り上げませんが、現在市販されている実質的にすべての SSD では、ドライブ上の「高速アクセス」領域のような役割として、この種のキャッシュが使用されています。

比較的小さなキャッシュ内にあるものは最速で読み込むことができますが、キャッシュの外側にある大きな領域に格納されているものは、読み込みに時間がかかる傾向があります。

ユーザー体験の観点から見ると、関連する要因は次のとおりです。

  • SSD がいっぱいになると、ファイルを追加する空き領域を確保できるように、キャッシュ領域は縮小する。これは「動的」キャッシングと呼ばれる業界標準の動作です。
  • 高速レーンのメリットがないと、SSD のキャッシュ領域の使い方は単純すぎるほどで、ドライブに新しく書き込まれたすべてのデータ (つまり保存されたすべてのファイル) がそのままキャッシュに格納され、さらに新しいデータによって最終的にキャッシュから追い出されるまで保持される。ソリダイムでは、これを「データ・トレッドミル」効果と呼んでいます。

その結果、ドライブの使用率が 50% 以上になると、1) ある時点でアクセスすることになる (と想定される) データがドライブ上に増える、と、2) そのデータを素早く取り出せるように利用できるキャッシュ容量がさらに縮小する、という 2 つの状況が混同します。これが標準的な SSD の耐用年数全体にわたって発生するストレージの速度低下を招く原因です。

こうした理由から、限られたキャッシュ領域を有効に活用することがますます重要になっています。これこそが、高速レーンの目的です。高速レーン機能は、実際の使用状況を監視して、ユーザーにとって最も重要なファイルやアプリケーションを特定し、それらのアイテムをキャッシュに保持することを優先します。

このアプローチで得られる主なメリットは、パフォーマンスの一貫性です。キャッシュの中身を最適化することで、最重要データを素早く利用できるようになる可能性が高まります。ドライブがいっぱいになり、その結果としてキャッシュサイズが小さくなるにつれて、この可能性は従来のキャッシュの挙動よりも高くなります。その理由は、従来のアプローチではどのデータをキャッシュするか (書き込みデータの新しさのみに基づく) 最適とは言えない判断をすでに行っており、ますます縮小するキャッシュ領域で今でも同様の動きを続けているからです。

高速レーンを使用すると、この機能を使用していない同じシステムと比較して、使用率が 50% のドライブで QD=1 のランダムリード速度 (応答性を高める主要な要因) が最大 120% 向上することが確認されています。

1 つ注意すべき点があります。ドライブ使用率がフルに近くなると、その分だけ動的キャッシュは縮小し、キャッシュに何を格納するかに関するインテリジェントな判断は少しも重要ではないため、高速レーンはほとんど、あるいは全く効果を発揮しません。同様に、ご想像のとおり、空のドライブではキャッシュ領域が十分にあるので、従来のアプローチであっても、ドライブに格納されたすべてのデータをキャッシュに保持できるため、この機能によってユーザー体験が大幅に向上することはありません。

高速レーンのメリットは、使用率が 25% ~ 75% のドライブで最も効果を発揮し、これは実環境の大部分に当てはまるとソリダイムは考えています。

スマート・プリフェッチ

リード処理では、各処理をシーケンシャルまたはランダムとして特徴付けることができます。

  • シーケンシャル処理がこのように呼ばれるのは、ストレージデバイス上のデータの連続した「チャンク」を扱うためです。(常にではなく) 多くの場合、個々の大容量ファイルの転送中に発生します。
  • ランダム処理は、ドライブが I/O 要求に応え、格納されているデータ内のある場所から別の場所に移動するときに発生します。(常にではなく) 多くの場合、比較的小容量のファイルを扱います。

ゲームの分野では、大量のモデル、テクスチャー、オーディオファイルなどのアセットを伴うため、ほかのどの I/O タイプよりも大きくシーケンシャル処理に偏っていることが、ソリダイム社内でのワークロード分析から分かっています。例えば、Elden Ring で新しいレベルを読み込む処理での内訳を考えてみましょう。

 ソリダイム社内での調査に基づくワークロード分析。

要点

  1. レベル読み込み中に転送された 781MB のデータのうち、87% はシーケンシャル・リード処理の形で移動されました。
  2. これらのシーケンシャル・リードの中には、さまざまな転送サイズがあり、処理数で見ると、非常に小さいサイズ (4KB) と非常に大きいサイズ (2MB) が最も多くなっています。

ゲーミングに関する考察で注目すべきもう一つの要素はキュー深度 (QD) です。これは、SSD コントローラーで一度に保留される未処理の I/O コマンドの数を示す指標です。実環境のアクティビティーの大半は、キュー深度 1 (QD=1) で実行される、つまり、キューは発生せず、SSD は要求を受信するとすぐに処理するということを理解しておく必要があります。

Elden Ring の例では、レベル読み込み全体での平均 QD は 1.2 でした。読み込みには 7 秒かかり、数万の I/O 処理で構成されています。

ここで出番となるのが、スマート・プリフェッチと呼ばれる Solidigm Synergy™ ソフトウェアの新機能です。ドライバーはこの機能を使用して、十分に予測可能なリード処理のストリーム (すなわち QD が低く、本質的にシーケンシャルの処理) が発生しているタイミングを検出できます。この情報を使用して、ユーザー・アプリケーションから要求を受ける前にデータを「プリフェッチ」します。

SSD は基本的に Solidigm Synergy™ Driver と連携して、PC に対し「すでに A、B、C、D の要求を受け取っているので、次は E、F、G が必要になると判断し、要求される前に渡します」と伝えます。その効果は、シーケンシャル・リード速度の大幅な向上です。特に、要求数が数千にも急増することがあり、それぞれの要求で数分の 1 秒のレイテンシーが生じ全体の完了時間に影響する転送サイズの小さい処理で、大きな効果を発揮します。

動的キュー割り当て

さらに、このドライバーではユーザー体験の最適化を追求し、ストレージ負荷の高いワークロードで、SSD そのもの以外のシステムリソースにボトルネックを発生させる可能性がある場所を特定しようと努めました。I/O 要求を受信し、その要求に応え、完了までルーティングを行うときに、例えばすでにビジー状態のコアに送信される完了処理が多すぎると、CPU のボトルネックが発生する可能性があります。

動的キュー割り当てでは、それほどビジーではない CPU コアに I/O 完了処理を動的にルーティングすることで、この問題を軽減します。最近の PC には、出荷時点でたいてい 8 コア以上のプロセッサーが搭載されています。この動的キュー割り当て機能ならば、これらのコアをより有効に活用して、ほかのコアがアイドル状態であるにもかかわらず、ビジー状態の 1 つのコアだけに大量の処理が集中し、ユーザーが完了するまで待たなければならない状況を排除できます。

今後の道筋

ソリダイムは、Solidigm Synergy™ ソフトウェア 1.0 のリリース当時、未来を見据えた取り組みの始まりであると約束しました。「ソリッドステート・ストレージの新たなパラダイムの実現」というソリダイムの使命は、関心を引くための単なるマーケティング・コピーではありません。

この約束に基づいて、2.0 リリースでは最新の UI と魅力的なパフォーマンス最適化機能が導入されました。このバージョンで提示した技術イノベーションと、これらのイノベーションを実現したエンジニアリング・チーム (ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア)、プランニング・チーム、マーケティング・チームの緊密な連携、リリース当初から重要なフィードバックでここまで導いてくれたユーザーの皆様を誇りに思っています。

ドライバーやハードウェアを通じてエンドユーザーからホストデバイスに至る Solidigm Synergy™ ソフトウェアのワークフロー

図5. Solidigm Synergy™ ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェアのワークフロー

しかし、ここで終わりではありません。今回のリリースは、可能性の限界に挑む数年にわたる取り組みの第 2 段階です。ソリダイムは、まだ実現されていない大幅な進歩や最適化があると考えており、理想的なユーザー体験を意欲的に追求して開発と改良を続けていきます。

今後にご期待ください。


付録: パフォーマンスに関する記述

すべての比較結果は、Solidigm Synergy™ ソフトウェアをインストールした PC システムと、Windows のデフォルトのディスクドライバーを使用する以外は Windows 11 (21H2) を実行するハードウェアおよびシステムイメージが同一のシステムとの比較に基づいています。テストは、2023年3月にソリダイムが実施しました。

[1] 一貫したパフォーマンス: 使用率が 50% の SSD でリード速度が最大 120% 向上

使用率 50% のドライブでの、評価ツール Iometer を使用した 4K ランダムリードのテスト (8GB スパン、300 秒)。システム構成: インテル® Core™ i7-11700K プロセッサー、16GB RAM、ソリダイム™ P41 Plus 1TB。

[2] 応答性: ランダムライト速度が最大 20% 向上

CrystalDiskMark 8.0.4 RND4K Q1T1 ライトテスト。 システム構成: インテル® Core™ i7-11700K プロセッサー、16GB RAM、ソリダイム™ P41 Plus 1TB。

[3] アプリケーションの起動: Microsoft PowerPoint の起動を最大 14% 高速化

Microsoft PowerPoint の起動テスト、5 回の実行から算出した起動時間の中央値。 システム構成: インテル® Core™ i9-11900K プロセッサー、64GB RAM、ソリダイム™ P41 Plus 1TB。

[4] ゲーミング: QD=1 の 4K シーケンシャル・リード速度が最大 350% 向上

CrystalDiskMark 8.0.4 SEQ4K Q1T1 リードテスト。システム構成: インテル® Core™ i7-11700K プロセッサー、16GB RAM、ソリダイム™ P41 Plus 1TB。

[5] PC の起動時間: システムの起動時間が最大 7% 短縮

PC の完全起動時間。 システム構成: インテル® Core™ i7-12700T プロセッサー、16GB RAM、ソリダイム™ P41 Plus 512GB。

[6] PCMark 10 ストレージ: テストスコアが最大 7% 向上

PCMark 10 フルシステム・ドライブ・ベンチマーク・テスト。 システム構成: インテル® Core™ i7-12700K プロセッサー、32GB RAM、ソリダイム™ P41 Plus 1TB。注: 報告されたパフォーマンスの向上は、PCH 接続の M.2 スロットを介してシステムに SSD を接続した場合の結果です。

すべての製品計画、ロードマップ、仕様、および製品説明は、予告なく変更されることがあります。

本資料に記載した内容はすべて、明示されているか否かにかかわらず、いかなる保証も行うものではありません。ここにいう保証には、商品適格性、特定目的への適合性、および非侵害性の黙示の保証、ならびに履行の過程、取引の過程、または取引での使用から生じるあらゆる保証を含みますが、これらに限定されるわけではありません。

製品をご注文される前に最新の仕様をご希望の場合は、ソリダイムの担当者または販売代理店にお問い合わせください。

本資料、および本資料内で参照しているドキュメント、その他のソリダイムの資料を入手するには、ソリダイムの担当者までご連絡ください。

テストでは、特定のシステムでの個々のテストにおけるコンポーネントの性能を文書化しています。ハードウェア、ソフトウェア、システム構成などの違いにより、実際の性能は掲載された性能テストや評価とは異なる場合があります。購入を検討される場合は、ほかの情報も参考にして、パフォーマンスを総合的に評価することをお勧めします。

パフォーマンスの測定結果は 2023年3月時点のテストに基づいています。また、現在公開中のすべてのアップデートが適用されているとは限りません。詳細については、公開されている構成情報を参照してください。 絶対的なセキュリティーを提供できる製品またはコンポーネントはありません。

ソリダイムの最適化機能は、他社製品に同程度の最適化パフォーマンスを提供できないことがあります。ソリダイムのテクノロジーを使用するには、対応したハードウェア、ソフトウェア、またはサービスの有効化が必要となる場合があります。

実際のコストや結果は異なる場合があります。

ソリダイムは、サードパーティーのデータについて管理や監査を行っていません。ほかの情報も参考にしてデータの正確さを評価してください。

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