金融サービス企業は、分散型のソフトウェア定義ストレージを使用することで、総所有コストを削減することができます。
データセンターでは現在、ストレージ容量とパフォーマンスの両方を十分に活用できていないことが多く、これにはもっともな理由があります。インフラストラクチャーは、特定のサーバーやアプリケーションで必要となる可能性をふまえて、最大限のストレージ容量とパフォーマンスの要件を満たさなければならないからです。実際、一般的な導入環境で、ストレージのパフォーマンスと容量はどちらも使用率が低い、または非常に低い状態にあり、こうした欠点を補って顧客ごとに特有の要件に対処できるようにした結果、ストレージ・ソリューションは急速に進化し始めています。
Finanz Informatik Technologie Service (FI-TS) は、大手の金融サービスや保険会社にサービスを提供する、ドイツのクラウドサービス・プロバイダーです。こうした大規模組織は、膨大な容量のデータベースを持ち、高レベルのパフォーマンスを必要とするサービスを提供しており、コスト削減を可能にすると同時にさまざまな要件にも応えられる、安全なインフラストラクチャー・サービスを必要としています。この目的を達成するには、有効に利用されていないストレージ容量を削減するとともに、パフォーマンスや柔軟性を損なうことなくデータ容量を効率的にスケーリングできる機能が不可欠です。FI-TS は、このような課題に対処できる効果的なソリューションの開発支援を Lightbits Labs とインテルに依頼しました。
FI-TS の DevOps チームは、社内で設計した NVM Express (NVMe) ベースのインフラストラクチャーでクラウドネイティブのサービスを提供するため、Kubernetes ベースで自社 Finance Cloud Native の本番インターフェイスを設計していました。ソリューションの最も重要な要件として、欧州連合 (EU) とドイツのデータ・コンプライアンス法を遵守しなければならず、これにはドイツ連邦金融監督庁 (BaFin) が定めるデータストレージ制約と金融規制も含まれます。あらゆる永続性ストレージでこれらの要件を満たす必要がありました。
残念ながら、当時 FI-TS の Kubernetes 環境でこうした重要な要件を満たすことは非常に難しく、直接接続の NVMe ストレージが利用されていたことがその理由です。Kubernetes オーケストレーションによって (MVMe 上の) ローカル永続ボリュームを有効にはできますが、これらはデータを保護できず、アプリケーション自体に高可用性が必要でした。可用性が十分でなければ、別のサーバーに移動されたコンテナーは以前に書き込まれたデータにアクセスできません。必要とされたのは、ローカル NVMe のように動作し、コンテナーと連動して、BaFin のデータ保護 / 保持要件を満たす、一元化された冗長ストレージ・ソリューションです。
FI-TS では、ストレージとリソース使用率の非効率性の問題も抱えていました。社内で導入していたレガシー DAS では、コンピューティング処理と切り離してストレージをスケーリングすることができなかったからです。こうした問題を解決するために、FI-TS では従来型のデータセンター・ストレージ・ソリューションを含むいくつかの代替ソリューションを検討しましたが、そのコスト構造は同社のビジネスケースと一致しませんでした。
FI-TS がサービスを展開する業種を考えると、必要だったのはローカルフラッシュのパフォーマンス速度で高可用性を提供できる永続性ストレージです。またこのソリューションをオーケストレーション層に取り込んで共通ストレージ・インターフェース (CSI) の仕様を適用し、Kubernetes と確実に連携させる必要もありました。さらに、複数の大規模な顧客環境でこのプラットフォームを使用することになるため、EU とドイツの厳しい金融規制やプライバシー保護規制を確実に遵守したうえで、マルチテナントに対応しなければなりません。
Lightbits とインテルのサポートがあれば直面している課題を解決できると判断した FI-TS は、次のようなソリューション要件の定義からコラボレーションを開始しました。
最初の詳細な概念実証 (PoC) プロセスを完了した FI-TS は、完成したクラウドネイティブの分散型ストレージ・ソリューションが永続性ストレージ機能と高可用性に関する最重要要件を満たしていると判断しました。そこからさらに Lightbits とインテルと協働を続け、インテル製品に基づく完全な本番環境を構築しています。
Lightbits では NVMe/TCP を採用しているため、このソリューションはイーサネットと TCP/IP に基づく FI-TS の既存インフラストラクチャーで問題なく動作しました。これにより、Remote Direct Memory Access (RDMA) ベースのプロトコルやその他のストレージ・ファブリックに比べて、スケーリングの簡略化と効率化が可能になります。
Lightbits とインテルは、FI-TS の厳しいサービス保証品質 (SLA) 要件を満たすことができました。最終的に構築された Finance Cloud Native サービス・ソリューションでは、コンテナーボリュームに Lightbits の LightOS 高性能ソフトウェア定義ブロックストレージが統合され、以下に示すインテルの幅広いハードウェア製品に対応しています。
FI-TS にとって最大の成果は、ローカルフラッシュに匹敵するパフォーマンスを発揮しながら移植性も備えた永続性ストレージを顧客に提供できるようになったことです。これはコンテナー化の領域で大きな飛躍であると同時に、Finance Cloud Native サービスのコスト構造とも一致します。さらに、成果はこの素晴らしいイノベーションをはるかに超え、Lightbits とインテルは高可用性と CSI を利用した Kubernetes との緊密な統合という、FI-TS が求めたまた別の重要な要件にも応えることができました。また、Lightbits では NVMe/TCP を採用しているため、このソリューションはイーサネットと TCP/IP に基づく FI-TS の既存インフラストラクチャーで問題なく動作します。これにより、RDMA ベースのファブリックやそのほかのストレージ・ファブリックと比較し、スケーリングはシンプルで効率的になりました。
FI-TS は Finance Cloud Native サービスを展開したことで、お客様環境のプロビジョニングを完全に自動化する API 主導の柔軟で使いやすい導入モデル実現し、競合他社との明確な差別化に成功しました。このサービスは、高 IOPS、低レイテンシー (負荷下においても)、高帯域、応答時間が一定の高可用性を実現します。
Finance Cloud Native サービスのインテリジェントなフラッシュ管理により、エンドユーザーは Kubernetes 環境のベアメタルで、数日どころかわずか数分でサービスの立ち上げが可能になります。2 これに加えて、シン・プロビジョニング、圧縮、スナップショット、シンクローン、ストレージのサービス品質 (QoS) といったメリットを有効活用しながら、高性能なソフトウェア定義のボリュームを簡単にプロビジョニングすることも可能です。LightOS は、インテル® Optane™ パーシステント・メモリーのモジュールへのランダムライトを把握してから、QLC SSD にシーケンシャル・ライトを実行するため、フラッシュの耐久性も高まります。インテル® Optane™ パーシステント・メモリー 200 シリーズと第 3 世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを搭載したこのソリューションでは、同じコンテナー数とスループットを維持しつつ、ノード当たり 704GB の 8 ノード・クラスターをノード当たり 2560GB の 5 ノード・クラスターに集約しました。
LightOS は、Kubernetes クラスターのスケーリングを自動化します。 これにより Finance Cloud Native サービスにお客様が求める俊敏性が備わり、ストレージクラスター全体のバランスを動的に再調整し、ボリュームを動的にサイズ変更して、ストレージのパフォーマンスと容量を個別にスケーリングできる、スケールアウト・アーキテクチャーが提供されます。この分散型アプローチが、ストレージとコンピューティングの比率を必要に応じて変更する柔軟性をもたらし、性能要件に応えます。ドライブやサーバーの障害保護、可用性の高い管理機能や検出サービス、何十万ものクライアントを確実に対応する能力など、信頼性は組み込まれています。
LightOS は、複数のプロジェクトとテナントを専用コンピューティング・サーバーと、完全に分離したLightbits ストレージでサポートしています。これにより、すべての FI-TS のお客様が、ご自分の本番環境でセキュリティーが有効になっていることを確認できます。 また、Finance Cloud Native のお客様は、各社のエンドユーザーのデータが欧州とドイツの法規制を遵守する高度なセキュリティ-保護を受けていることで、安心感を得ることができます。 FI-TS の差別化を促すソリューション Lightbits とインテルのソリューションにより、お客様環境へ FI-TS のサービスをスムーズに導入できるようになりました。これを実現できるのは、Finance Cloud Native サービスでは専用のクライアント・ソフトウェアを使う必要がなく、アプリケーション環境の統合がシンプルで、標準的な TCP/IP ネットワーク・インフラストラクチャーを利用しているからです。業界標準のストレージサーバー用ハードウェアに対応することで、コストも抑えられています。FI-TS は Lightbits とインテルとのコラボレーションの結果、リソース使用率とパフォーマンスを向上させ、データのスケーリングを効率化し、TCO の削減に成功しました。さらに、顧客の最重要ニーズに応えることで、サービスの大きな差別化につなげています。