クラウドストレージとコンピューティングのパワーを最大限に引き出す EDSFF 対応 SSD

EDSFF SSD configurations for cloud storage compute solutions
EDSFF SSD configurations for cloud storage compute solutions

クラウドストレージとコンピューティングの急速な成長は、スケーラブルで信頼性の高いデータ・ストレージ・ソリューションに対する需要の高まりによってますます加速するばかりです。膨大な量のデータとコンピューティングのパワーを必要とする AI や大規模な言語モデル (LLM) の出現により、パフォーマンス、信頼性、効率性の向上を求めるニーズへの対応が最重要課題となっています。この記事では、クラウドストレージとコンピューティング環境において Enterprise and Data center Storage Form Factor (EDSFF) 対応 SSD がもたらすさまざまなメリットについて、深く掘り下げて説明します。 

業界による EDSFF 規格の迅速な採用

今後数年の EDSFF 採用を予測するグラフ

図 1. 2027年までの EDSFF 採用の推移

EDSFF 規格は、大手のクラウド・サービス・プロバイダー (CSP) やエンタープライズ企業による採用が急速に進んでいます。その汎用性とパフォーマンス面でのメリットが、最新のコンピューティング環境にとって魅力的な選択肢となっている理由です。EDSFF のエコシステムが対応するフォームファクターは幅広く、それぞれに独自のメリットがあります。  

例えば、次のような動向が見られます。

  • D7-P5520などのE3.Sが2Uサーバーで成長しており、U.2に取って代わっている
  • D5-P5430などのE1.Sが、急速にM.2に置き換わりつつある
  • 一方でD5-P5336などのE1.Lは密度の最適化を推進している

このようにEDSFFが広く採用されていることは、次世代クラウド・ストレージとコンピューティング・インフラストラクチャーの有力な選択肢として、EDSFFが確固たる地位を築いていることを示しています。 

EDSFFがエンタープライズ環境にもたらす主なメリット 

従来の SSDフォームファクターから E3 などの EDSFF 構成への移行を示す図。S、E1.S、E1.L

図 2. 従来の構成から EDSFF フォームファクターの移行

EDSFF SSDには、特にクラウド・ストレージとコンピューティングの要件に適した幅広いメリットがあります。主なメリットについて、詳しく見ていきましょう。

1. 豊富なオプション: EDSFF SSDには、包括的にカバーする容量、パフォーマンス、帯域幅、フォームファクターのオプションがあります。この柔軟な選択肢の幅は、高密度ストレージ (E1.L)、スケーラブルなパフォーマンス (E1.S)、メインストリーム 2U サーバー (E3) の最適化と広く及びます。

2. フォームファクター全体で統一されたコネクターとピン配列: すべてのEDSFFドライブは、さまざまなフォームファクターにわたりコネクターとピン配列が統一されています。共通のコネクター、ピン配列、プロトコル (NVMe、PCIe) こそ、柔軟で効率的なサーバー設計を可能にしている理由です。この統一性に、複数のサイズとフォームファクターが組み合わさることで、拡張性、柔軟性、保守性、管理性が向上し、企業環境の固有のニーズに応じたストレージ・ソリューションのカスタマイズ構築が可能になります。大容量のストレージからハイパフォーマンス・コンピューティングまで、EDSFF SSD ならば必要な選択肢が揃っています。U.2 や U.3 ドライブと比べてコネクターとピン配列が改良されていることから、EDSFF は PCIe 5.0 以降の最適な、というよりも不可欠な選択肢となっています。

3. パフォーマンスと信頼性の向上: EDSFF SSD は、NVMe インターフェイス、PCIe 5.0 以降に対応しています。これにより、データ転送速度の高速化、レイテンシー低減、信号整合性の問題の軽減につながりました。その結果がパフォーマンスの向上、データアクセスの高速化と信頼性の向上であり、いずれも AI や大規模言語モデル (LLM) といった負荷の高いワークロードで重視される要件です。EDSFF SSD を導入することで、企業はデータ集約型のアプリケーションをより効率的に処理できるようになります。

4. コスト削減: EDSFF SSD は、運用コストの面で大きなメリットを提供します。EDSFF ドライブはホットプラグ接続と前面からのアクセスが可能なため、システム内に搭載する EDSFF SSD の保守性と管理性が向上し、保守とトラブルシューティングのプロセスが効率化します。その結果として現れる効果が、ダウンタイムの短縮と生産性の向上です。さらに、単一のインフラストラクチャーで複数のフォームファクターに対応できることから、リソース使用率の最適化を図り、複数のストレージ・ソリューションの維持に関連するコストの削減につながります。

5. 冷却効率の向上: EDSFFのアーキテクチャー設計によって効率的な冷却ソリューションが可能になり、サーバー環境に導入するストレージデバイスの耐用年数と信頼性が確保されます。冷却効率の向上は、システム全体の電力効率の向上とコスト削減、さらにサステナビリティーにも影響する要素です。

電源入力の増加を目指した設計

EDSFF SSD の電力バジェットと使用率の予測値を示すグラフ

図 3. EDSFF の電力バジェットと使用率の比率予測

EDSFF フォームファクターのもう 1 つのメリットは、従来の 2.5 インチ SSD よりも電源入力が増加するように設計されている点です。2.5 インチ SSD の多くが 25W で最大出力となる一方で、EDSFF SSD は最大 70W まで処理できます。NAND 型ストレージ、つまり SSD の最適な電力バジェットは約 20 ~ 25 ワットですが、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ (FPGA)、アクセラレーター、ネットワーク・インターフェイス・コントローラー (NIC)、Compute Express Link (CXL) カードなどの電気コンポーネントには、これよりも高い電力容量のほうが適しています。 

例えば次のようなケースが挙げられます。

  • 7.5mm 厚と単一の E3.S フォームファクターは、20W ~ 25W の電力範囲に対応するように設計されています。これはサーバーのプライマリー NAND ストレージ用に特化して最適化されており、効率的かつ信頼性の高いパフォーマンスを実現します。
  • 2 倍厚 (16.8mm) の E3.S フォームファクターは電力範囲がさらに広く、CXL ベース SCM のような高出力デバイスに 35W ~ 40W の範囲で対応します。
  • 7.5mm 厚と単一の E3.L フォームファクターは、最大 40W の電力レベルに対応するように設計されています。このフォームファクターは大容量 NAND ストレージのニーズに応え、データ集約型のワークロードに豊富なストレージスペースを提供します。

さらに高出力のニーズについては、2 倍厚 (16.8mm) の E3.L フォームファクターが最大 70W に対応します。これは、目的の機能を効果的に実行するために十分な電力を必要とする、FPGA やアクセラレーターといったデバイス向けの最適な選択肢です。

選択するべきは EDSFF は?

従来のフォームファクターから EDSFF への移行方法

1. U.2 から EDSFF への移行

ホットスワップ機能が有効な U.2 は、比較的スペース効率が高いものの、HDD から受け継ぐ従来の設計により、SSD に最適化するには限界があります。U.2 から EDSFF への移行は、大きく 3 タイプに分類できます。

  1. 2U の密度に最適化: 電力効率とパフォーマンスの両立、デバイス混在の柔軟性を求める 2U サーバーは、長短と横幅のバリエーションが豊富で、パフォーマンス、効率性、柔軟性、拡張性を兼ね備えた E3 に移行します。

2. M.2 から EDSFF への移行

M.2 は元々スペース効率を最優先に、保守性と拡張性はそれほど重視しないノートブック PC のストレージ用に設計されたフォームファクターです。M.2 から EDSFF への移行は、主に E1.S フォームファクターが中心になっています。ストレージ密度と高性能コンピューティングのバランスを求めるサーバーは、機能拡張された E1.S のメリットを最大限に活用できます。この移行はさらに、ブートドライブをホットスワップ対応のデバイスに移行する機会でもあります。

まとめ

EDSFF SSD は、クラウドストレージとコンピューティング環境に多くのメリットを提供します。その幅広い選択肢と、高いパフォーマンスや信頼性、コスト削減効果、効率的な冷却機能といったメリットにより、特に AI や LLM といった最新のアプリケーションのニーズを満たす、最適なフォームファクターとなっています。 

業界の急速な EDSFF の採用と、U.2 や M.2 など従来のフォームファクターからの移行は、さらにその有効性を実証するものです。企業がクラウドストレージやコンピューティング機能の拡張を続け、次世代 PCIe (PCIe 5.0 以降) へ移行するとともに、EDSFF の採用は効率性、パフォーマンス、信頼性の最大化に欠かせない要件となっています。 


著者紹介

ソリダイムの製品マーケティング・シニア・マネージャーを務める Elsa Assadian は、データセンターとクラウド・ストレージ・ソリューションを専門としています。エンジニアリングの修士号を取得しており、ソリダイム、インテル、Mercedes Benz で最先端テクノロジーに携わった 15 年の経験を有しています。信念は継続的な改善とチームワークです。 時間のあるときには、テニスと仲間との交流を楽しんでいます。