122TB 達成までの厳しい道のり:数十年にわたるエンジニアリングの偉業がこの画期的成果として実を結びました

Jaws and AI workloads comparison. High desnity SSDs are like a bigger boat.
Jaws and AI workloads comparison. High desnity SSDs are like a bigger boat.

アミティ島の警察署長マーティン・ブロディは、1975年上映映画 『ジョーズ』の重要な場面で、不朽の名言を口にします。自分のチームが追っている人食いサメを初めて間近で見たマーティンは、恐怖を感じ、サム・クイント船長に今の艤装ではこの任務は難しいことを伝えます。

もっと大きな船が必要だ。

AIブームが始まって2年が経過し、ハイテク業界はジョーズと同じ瞬間を迎えています。AI は大量のデータを利用することが分かったのです。

FutureTech によると、2021年のAIモデルのトレーニングセットでは、そのデータポイント数の中央値は、420億でした。2022年には、その2倍以上の1,050億となっています。この数はさらに1年で6倍以上になり、2023年には AI のトレーニングデータセットでのデータポイント数の中央値は、7,500億に達しています。

AI のワークロードを小型ボートの話になぞらえてみましょう。高密度 SSD は、大波に立ち向かう大きなボートのようなものです

1つの解決策としては、より多くのストレージデバイスを追加して問題に対処することです。ハードディスク・ドライブは現在、最大24テラバイト(TB)までの幅広い容量が販売されています。最新モデルのトレーニングにさらに10ペタバイト(PB)のストレージが必要であれば、417ペタバイト追加すればよいのです!

もちろん、この方法にも問題点があります。417台のハードディスク・ドライブが多くの電力とラックスペースを消費することです。当然ですが、これだけの数のドライブを冷却し、故障したら交換するという追加の作業が発生するのです。

もう1つの解決策としては、もっと大きなボートを用意することです。Solidigm は先日、122.88TBの容量を持つ同社最高容量のSSDD5-P5336を 2025年第1四半期に発売すると、発表しました。これは前述のハードディスク・ドライブの5倍以上の容量です。10PBを保管するには、84台用意すればよいのです。

122.88TBというストレージ容量は一体どれくらいでしょうか? 例えば、1990年代に劇場公開されたすべての映画を4K画質でコピーした場合、おおよそでその2.6倍分の容量があります。あるいは、ビートルズの楽曲カタログの全内容を144,000回以上コピーできる容量です。ウィリアム・シェイクスピアの全集であれば、1,700万回以上コピーできます。すべて1組のトランプの山程度の大きさです。

このような密度は、偶然に達成できるものではありません。この道を切り開くに至った重要な技術革新をいくつか振り返ってみましょう。

QLC NAND のパイオニア

Solidigm がこのような大容量 SSD の開発能力をどのように持てるようになったかを理解するため、2018年に遡って少し振り返ってみましょう。2018年は、インテルが、QLC(クアッドレベルセル)NANDをベースにした世界初のストレージデバイスSSD 660pを発売した頃です。Solidigm は、インテルがストレージ部門を2021年にSK hynixに売却したことで誕生し、以来、このQLC技術をさらに発展させてきました。

QLCは、NAND セル1つあたり4ビットの情報を格納する仕組みで、当時だけでなく現在も広く使われている TLCメディアに比べて、33%の容量増を実現しています。最初の製品は、データセンター用ではなくパーソナル・コンピューター向けに開発され、最大容量は2TBでした。しかし、これがより高密度なドライブを開発する基礎とななりました。

そして今日に至ります。Solidigm は、第4世代のQLC NANDベースのSSDを出荷しています。D5-P4326、D5-P5316、そしてもちろんD5-P5336といった、2018年以降の技術的ブレークスルーのおかげで、単一デバイスの100TBの壁は、過去のものとなりました。メディアの世代が進むごとに、密度だけでなく性能、耐久性、信頼性も飛躍的に向上しました。

単一デバイスの100TBの壁は、もはや過去の話です

ハードウェア&アーキテクチャの成果

D5-P5336 SSDは、高密度イノベーションをその中核に組み込んだ製品です。サイズと消費電力の両面において、最小限のフットプリントで最高のストレージ密度を実現するため、設計のあらゆる側面で徹底的に最適化しています。Solidigmのアーキテクトとエンジニアは、市場で最も高密度なSSDを開発するために、数えきれないほどの時間を費やし、ストレージの密度と効率における新しい業界標準を確立しました。

D5-P5336は、次のような画期的なイノベーションにより、この前例のない容量拡張を実現しています。

メディア帯域幅の拡張:ほとんどのSSDベンダーは、SoC 側でデータバスを継続的にサンプリングし、NAND側で再送信を行うアクティブスイッチを採用しているため、アイドル状態でも電力を消費します。それに対し、Solidigmは、消費電力がほぼゼロのパッシブスイッチである高速NAND バス・マルチプレクサを設計しました。この進化を遂げたことで、D5-P5336は、SSDの密度とNANDコンポーネントの数が増加するにつれて極めて重要になるエネルギー効率を、最大限に高めることができます。

NANDと基板設計:当社では、業界知見に基づき、122TB SSDに不可欠な革新技術である、高密度U.2 SSD設計用の折り畳み式プリント基板(PCB)を導入しました。この設計では、多数のNANDサイトをメモリ、コントローラ、その他のコンポーネントと一緒に基板上に配置します。業界最小のNANDパッケージを使うことで、Solidigmでは1つの基板に、より多くのパッケージを統合することができます。より細かいボールピッチに移行することで、コントローラのサイズを23x23mmから19x19mmに縮小しました。さらに、ポリマータンタルコンデンサよりもフットプリントが小さいアルミ電解コンデンサを使用することで、電力損失を保護するためのスペース要件を大幅に最小化しました。

電力適応性:SolidigmD5-P5536シリーズSSDでは、標準の25W以外に、低電力モードもサポートしています。NANDコンポーネントの使用を分散する最先端のアルゴリズムにより、D5-P5336 122TBは、高い電力効率で卓越したパフォーマンスを発揮します。これにより、ユーザーは自社のストレージシステムの要件に合わせて電力とパフォーマンスを調整し、コンピューティング、ネットワーク、ストレージのリソースに電力予算を効果的に割り当てることができます。 

AIの時代を迎える

Solidigmの122.88TB SSDは、まさに絶好のタイミングで市場に登場しました。

AIコンテンツの需要は、学習と推論の両面で爆発的に増加しています。より高性能で洗練されたモデルの開発競争が激化する中、開発者はAIクラスターにますます膨大なデータセットを入力しています。ほんの数年前は、パラメータ数が数百万のモデルでも感動的でした。今日では、何百兆、あるいはそれ以上のパラメータ数を持つ領域に踏み込んでいます。高密度QLCは、一般的な合成ワークロードでは、摩耗するのに数年かかります。早期推定では、D5-P5336の122.88TBで32KBまたは4KBのランダム書き込みを100%デューティ比で24時間365日実行しても、保証期間の5年間でこのドライブが摩耗しないことが示されています。つまり、ドライブの保証期間中、無制限のランダム書き込みに耐えることができます。 

デジタルランドスケープを背景に、オレンジ色の矢印が上昇していく。急ピッチで増加するAIデータには122TBのデータストレージデバイスが必要です

展開されたモデルにもスペースが必要です。 画像や動画の生成モデルでは、通常テキストの何百倍ものサイズの個々の入力と出力を扱っています。そして多くの場合、週に何千、何百万ものリクエストを処理しています。アーカイブや再トレーニングをするために、すべてのデータを保持することは、大変な作業です。

そしてAIは、データセンター以外の場所でもますます増えています。エッジ推論とファインチューニングは、インフラストラクチャをデータに近づけていこうとする企業の間で普及しつつある手法です。これは、従来のインフラストラクチャをデータから遠ざける方向とは逆の傾向です。レイテンシーやセキュリティなど、その手法をとりたい理由はたくさんあります。また、オンサイトサーバーやエンドポイントデバイスにおいてスペースの制約がはるかに厳しいエッジでは、ストレージ密度がさらに重要になります。

しかし、すべてのデータの保存が必要であること以上に、AIの進歩における中心的な課題は、エネルギー効率の側面です。超高密度SSDによって、この問題がどのように解決されるかについては、当社のAIランディングページをご覧ください。つまり、各ドライブの記憶容量が大きければ大きいほど、必要なドライブの台数を減らすことができるのです。


Ace Stryker は、Solidigmの市場開発ディレクターであり、同社のデータセンター・ストレージ・ソリューション・ポートフォリオの新興アプリケーションに注力しています。 

Solidigmの製品マーケティング担当シニアマネージャーであるユヤン・スンは、SSDストレージ設計、ビジネス計画、マーケティングおよび戦略分野で10年以上の経験を持っています。  

本資料に記載した内容はすべて、明示されているか否かにかかわらず、いかなる保証も行うものではありません。ここにいう保証には、商品適格性、特定目的への適合性、および非侵害性の黙示の保証、ならびに履行の過程、取引の過程、または取引での使用から生じるあらゆる保証を含みますが、これらに限定されるわけではありません。

本書で説明されている製品には、「エラッタ」と呼ばれる設計上の不具合が含まれている可能性があり、公表されている仕様とは異なる動作をする場合があります。現在確認済みのエラッタについては、Solidigmまでお問い合わせください。

製品をご注文される前に最新の仕様をご希望の場合は、Solidigmの担当者または販売代理店にお問い合わせください。