AIインフラは、2つの明確に異なる運用モデルに分かれつつあります。一方は従来のデータセンターです。これは、多くのアプリケーションを高い信頼性、安全性、および費用対効果の下で実行できるよう最適化された汎用施設です。キャパシティプランニングにおいては、CPU使用率と物理的または仮想的な密度に重点が置かれます。
もう一方はAIファクトリーです。これは、データを産業規模で「インテリジェンス」に変えるよう設計されたAIネイティブな本番環境であり、効果的な推論を確実なものとするために、測定可能なスループットでモデルのトレーニング、ファインチューニング、そして提供を継続的に実行します。AIファクトリーにおいては、GPU時間、トークン・スループット、モデルのイテレーション速度、そしてデータパイプラインの効率性が重要な要素となります。AIファクトリーでは、ストレージはAI生産ラインにおいてパフォーマンス上極めて重要なステージとなっており、単なるリポジトリではなくなっています。
AIファクトリーについては、目的に特化したAIライフサイクル生産システムと考えると最もよく理解できます。NVIDIAの用語集では、AIファクトリーのことを、AIのライフサイクル全体を管理する専用のコンピューティングインフラと定義しています。1 ここでいうライフサイクルには、データの取り込みと準備から、学習、ファインチューニング、大規模推論までが含まれ、2 ここでの「製品」とは、単位時間あたりのトークン数、推論数、または成果として表現されるスループットによって測定されるインテリジェンスを指します。
データセンターとは、サーバー、ストレージシステム、ネットワーク機器、およびそれらを稼働させるために必要な電力、冷却、物理セキュリティといった補助システムを収容する汎用施設のことです。IEAはデータセンターについて、IT機器のラックと、その機器を継続的に機能させるために必要な補助的インフラを備えた施設であると説明しています。3
AIファクトリーもまた、データセンター内に見られるようなハードウェアや補助システムを備えています。では、実際のところ何が違うのでしょうか?
有益なメンタルモデル:AIファクトリーはデータセンター内で稼働できますが、その動作は生産ラインに似ています。計算リソース、ネットワーク、そしてストレージの全体にわたって、より決定論的なパフォーマンスが求められます。これは、ボトルネックが発生するとGPUの稼働が滞り、コストの増大を招くためです。
AIファクトリーとは、ハードウェア、ソフトウェア、および運用プロセスを統合したスタックであり、以下を実現できるよう設計されています。
重要な要素となるのは、AIファクトリーの出力が、特定のビジネスアプリケーションではなく、継続的に生成されるインテリジェンスであるという点です。これらは、レコメンデーション、分類、要約、アクター、またはエージェントである可能性があります。NVIDIAは、AIファクトリーについて、ライフサイクル全体を管理し、大規模な推論をスケーリングするものであると明確に定義しています。1
AIファクトリーは、生データを、AIモデル、予測、意思決定、生成コンテンツといった学習済み出力へと変換します。AIファクトリーはデータパイプラインを本番インフラとして扱い、学習と推論を通じて出力を継続的に向上させます。モデルの品質がデータ品質の向上に基づいたものとなるよう、データに対してクレンジング、ステージング、変換、バージョン管理、検証が実行されます。
「モデルプロジェクト」の代わりに、各タスクが先行タスクを積み重ねていく、一連のタスクが構築されます。その上で、エージェントによってこれを反復可能なプロセスにすることができます。
数万ドルもの価値があるGPUやDPUがアイドル状態になると、すぐに多大なコスト損失となります。運用上の中心的な目標となるのは、アクセラレータの「バブルタイム」、すなわちGPUがデータ、同期、またはI/Oを待機しているアイドル期間を最小限に抑えることです。NVIDIAのAIエンタープライズ向けサイジングガイダンスでは、データを常にGPUの近くに配置しておくことで、ローカルNVMeストレージがストレージ面のボトルネックを解消し、トレーニングと推論のスループットを向上させることができると明確に示されています。5
この「データパイプラインを十分に高速に保つことで、GPUを常にフル稼働状態にする」という1つの考え方こそが、AIファクトリーを標準的なデータセンターと比較した場合に、ストレージアーキテクチャをめぐる決定が劇的に異なるものとなっている理由です。6 NVMeストレージは今や、AIファクトリーのインフラおよび計算リソース戦略に不可欠な要素となっており、従来のデータセンター構築において二の次にされていたような存在ではなくなっています。詳しくは、当社の記事「 NVIDIA GTC 2026 が明確にした点:AI の次の飛躍はストレージにかかっている」をご覧ください。
AIファクトリーはデータセンターと同じ多くの構成要素を共有していますが、AIのスループットに対応させる目的から、それらの選定や統合の方法が異なっています。
AIファクトリーでは、ストレージとメモリに階層型モデルを採用するのが一般的です。
ここで、Solidigmが戦略的に重要な役割を果たします。データセットが拡大するにつれて、チームは消費電力、ラックの設置面積、運用オーバーヘッドを大幅に増やすことなく容量と密度を拡張していく必要があります。AIファクトリーにおけるストレージの詳細については、当社の記事「AI向けデータストレージにおけるCMX(コンテキストメモリeXtension)の概要」をご覧ください。
データセンターは、デジタルサービスを支える基盤となる施設です。適切な物理的セキュリティ、パワコン、冷却、監視、運用体制を実現させ、信頼性の高い計算リソース、ストレージ、ネットワークを提供するために、データセンターは存在します。
IEAによる説明は単純明快です。データセンターには、ラックに設置されたサーバー、ストレージシステム、ネットワーク機器に加え、これらのシステムを継続稼働させるために必要な補助インフラが収容されています。3
こうした汎用的な機能こそ、データセンターがマルチテナント環境におけるワークロードの多様性に優れ、長期的な運用安定性を実現できる理由です。
AIデータセンターは、AIモデルを大規模にトレーニングし、ファインチューニングし、展開し、実行するために必要なインフラと運用サービスを提供します。そのため、計算リソース、ストレージ、ネットワーキング、およびガバナンスが連携し合い、AIワークロードが高い信頼性、安全性、コスト効率の下に実行可能となる環境が確保されます。
データセンターの中核をなす構成要素は、コンピューティングのワークロードを大規模かつ安全に、高い信頼性をもって実行するために必要なITシステム・施設インフラです。これらには、計算リソース、ストレージ、ネットワーキング、電力、冷却、物理的保護、運用管理などが含まれます。
ラックマウント型のコンピュータが継続的に稼働し、リクエストの処理、アプリケーションのホスティング、ファイルの保存、データベースの実行を行います。CPU、アクセラレータ、メモリ、ストレージなどが搭載されている場合があります。
ストレージメディアは、サーバーによって実行されるすべてのプロセスのデータを保持し、ローカルストレージが容量不足になると計算リソースサーバーに接続されます。レイテンシに敏感な読み取り処理に対応でき、かつ高スループットが求められる場合には、Solidigm D7-PS1010のような高性能なNVMe SSDが最適です。ラック密度を最大化するとともに、消費電力を最小限に抑える必要があるデータセンターには、大容量のSolidigm D5-P5336 NVMe SSDが最適です。HDD、さらにはテープも含む、レガシーのストレージオプションも、コールドストレージとして活用できます。ストレージオプションの詳細については、当社の記事「ディスクドライブに最適のレガシー」をご覧ください。
サーバー同士を相互に接続するのは、スイッチ、ルーター、イーサネット、および光ファイバーケーブルです。これらは、高帯域幅の接続を介してサーバーをインターネットにも接続します。ロードバランサーがトラフィックを管理して、リクエストが必ず均等に分散されるようにします。これらの機器は、データセンターの設計上、一般にラックの最上部に設置されます。
データセンターがすべてのシステムを稼働させ続けるために消費する電力量は膨大であり、この電力を途切れさせないことが不可欠です。実際、電力はデータセンターにとって最大の運用上の課題です。通常運用時には、変電所から商用電源を通じて電力が供給されます。しかし、データセンターの常時稼働を確実なものとするには、無停電電源装置(UPS)が不可欠の代替システムとなります。UPSは小規模なものでは本質的にバッテリーであり、停電が発生してもデータセンターの稼働を維持することができます。長期間の停電時には、ディーゼル発電機がさらなる電源冗長性をもたらします。
冷却は、データセンターにとって2番目に大きな課題です。大別すると液冷と空冷に分けられますが、どちらの手法にも、多くのバリエーションや細かな違いが存在します。
空冷:ほとんどの空冷システムは、ファンを使用してサーバー内に冷気を送り込み、熱を室内に排出します。コンピュータ室用空調装置(CRAC)は二重床の下に冷気を送り込むのに対し、インロー型冷却ユニットはサーバー間に設置可能です。オーバーヘッド型冷却は二重床を不要とし、熱気を上方に吸い上げながら、冷気をラック内に下方から送り込みます。現在、空冷は中程度の密度の汎用エンタープライズラックに使用するのが最適です。
液冷:液冷環境において多くの人が思い描く標準的なシステムとなっているのは、デバイス筐体にコールドプレートを取り付けた直接液冷(DLC)、あるいはコールドプレートがシリコン部品に直接接触するチップ直接液冷(DTC)です。データセンターにおける液冷のその他の選択肢としては、液浸冷却、インロー型液冷、リアドア型熱交換器(RDHx)などが挙げられます。
ハイブリッド冷却:この手法は液冷と空冷を組み合わせるものであり、一部のラックが他よりも高密度である場合や、より集中的な冷却が必要とされる場合(AIポッドが環境の一部を構成している場合など)に使用されます。その代表例として挙げられるのは、GPUやCPUにはダイレクトDTC方式の液冷ソリューションを使用し、他方メモリやストレージコンポーネントの冷却にはサーバー内のファンを使用する構成です。
アクセス制御、監視、オンサイトモニタリングにより、貴重なデータと知的財産、インフラを保護し、悪意のある攻撃者からの攻撃を防ぎます。また、規制上・コンプライアンス上の要件を満たすためにも不可欠です。
早期検知および消火システムは、施設のリスク基準に適合している必要があります。これには、コンピュータコンポーネントが電気的短絡の危険に決してさらされないようにするための、非液体系の難燃剤も必要となる場合があります。
これには、摩耗、アイドル時間、その他の運用指標を追跡するために、システムの各コンポーネントに組み込まれた機能が含まれます。また、データセンターインフラ管理(DCIM)ソフトウェア、可観測性ツール、アラート、インシデント対応、変更管理プロセスによる継続的な監視を含むことがあり、これらはインフラ投資の長期的な実行可能性と保護を確保するために組み込まれます。
データセンターの稼働は、IT機器に継続的かつ安定した電力と冷却を供給し、それらの機器を耐障害性の高いネットワークで接続した上で、厳格な監視と手順に基づき運用することで、アプリケーションが安全かつ確実に実行されるようにすることで維持されています。
AIファクトリーと従来のデータセンターは、基盤となるインフラを共有していますが、目的、アーキテクチャ、および運用指標の点では大きく異なります。特に、AIワークロードがパフォーマンス、コスト、およびスケーリングに関する意思決定の主要な推進要因になると、両者の違いは顕著なものとなります。
従来型の環境では、多くの場合、ストレージのサイズは容量、耐障害性、およびコストを基準に決定されます。
AIファクトリーにおいて、ストレージは多くの場合、以下のような役割を果たします。
NVIDIAのサイジングガイダンスでは、NVMeローカルストレージがボトルネックを解消し、GPUがデータに可能な限り高速にアクセスできるようその負荷を軽減することが強調されています。1 これはまさに「ファクトリー」的な考え方です。NVMeストレージは、生産を継続させるために存在します。
データセンターのインフラは電力を大量に消費します。そのため、以下の点を踏まえた意思決定が求められます。
AIファクトリーは以下のように、製造業のように機能します。
AIの導入が進むにつれ、経営層の議論はユニットエコノミクスへと移行しています。具体的には以下のような点です。
ストレージに関する意思決定が測定可能な影響をもたらす場合があるのは、ここです。I/Oストールを回避してGPUのアイドル時間を削減できれば、同じ GPUフリートでより多くの出力を生み出せます。
AIは単に「ワークロードを増やす」だけではありません。施設に、そして運用の前提条件に負荷をかけます。
送電網の容量と地域の許認可が、AIインフラの拡張先にできる場所を決定づける要因として、ますます重要になっています。公開されている報告書や予測では、データセンターの成長が電力需要の増大と結びつくことが繰り返し指摘されています。
GPUインフラやラック密度の増加に伴う、ラックあたりの電力需要の増大により、チームは以下の対応を迫られています。
従来の環境では、ストレージのレイテンシの急上昇がボトルネックとなっていました。
AI学習において、ストレージのストールはGPUのアイドル時間に直結します。そのため、アーキテクチャでは、計算リソースに近い場所にNVMe階層を配置することがより一層重視されるようになっています。詳細については、当社の記事「AIがメモリ不足に陥るとき」をご覧ください。
AIクラスタは常に通信を行っており、ダウンタイムは限られています。East-West帯域幅に制約があると、学習速度の低下、推論レイテンシの不安定化、さらには運用の複雑化を招きます。
AIには、データサイエンス、プラットフォームエンジニアリング、セキュリティ、法務、プロダクトなど、かつてないほど多くのステークホルダーの関与が求められます。運用モデル(「ファクトリー」という考え方)がなければ、チームは終わりのない引き継ぎを余儀なくされ、さらには脆弱でその場しのぎの構築に終始してしまいます。
「AIファクトリー」と「データセンター」という区別は、単なる言葉の意味の問題ではありません。これは、ロジスティクスと、より大規模なスケールプランニングの枠組みの問題に帰着するものです。
企業のリーダーにとって実践的な教訓となるのは、AIを単なる別のワークロードのように扱うことはできないということです。そのように扱ってしまうと、電力制約、冷却限界、ネットワーク接続、ストレージのボトルネックといった、データセンターで発生することが予測しうる問題を悪化させ、高価なGPUのアイドル時間を生じさせる可能性が高くなります。
しかし、AIファクトリーという考え方を取り入れれば、パイプラインの設計を通じて、計算リソースの生産性を保ち、NVMeストレージを戦略的な加速要因とすることができます。ここで、Solidigmの大容量SSD と高密度階層が、はっきりと分かる運用上のメリットをもたらすことができます。AIデータセットおよびサービスを拡張でき、他方、その拡張に伴って複雑さを同様の割合で増大させるようなことはないのです。
正確には異なります。AIデータセンターは単に AIワークロードを実行する施設であるのに対し、AIファクトリーとは、エンドツーエンドのスループットと継続的なイテレーションに向けて最適化された、生産スタイルの運用モデルのことを意味します。
これらは、RAGナレッジアシスタント、セキュリティ分析、パーソナライゼーション、産業用AI、およびドキュメント自動化に使用されています。AIモデルの学習、ファインチューニング、あるいはエンタープライズデータに近い場所での提供が必要なあらゆる場面で使用されているのです。
一般に、AIデータセンターの方が、ラック密度が高く、East-West方向のネットワーキングが拡張されているほか、冷却要件が厳しく、パフォーマンスに対するストレージ階層の反応性が高いため、GPUやDPUのようなアクセラレータがデータ待ち状態になることはありません。
データセンターは、電力を調整、分配し、冷却システムを通じて熱を除去し、ネットワーク経由で各システムを接続し、運用プロセスに基づいて信頼性とセキュリティを確保します。
ストレージスループットは、GPUの利用率に直接影響します。データの転送速度が十分に高速でない場合、アクセラレータはアイドル状態となり、AIコストが増加する形になります。そのため、ストレージのボトルネックを解消できるよう、ローカルNVMeが特に使用されるケースがよく見られます。
アクセラレータの継続的な使用により熱が発生するため、まず電力と冷却の点で変化します。これらに続いて、East-West(サーバー間またはサーバーとストレージ間)の帯域幅のためのネットワークファブリックが変更され、その後、ストレージアーキテクチャが変更されます。GPUを使用するには、より多くのNVMe階層と高密度のSSDラックがどうしても必要になります。
電力制約、サーマルホットスポット、ネットワークのオーバーサブスクリプション、ストレージのボトルネック、そしてチーム間の組織的な摩擦が、最もよく発生する障害状況です。
Solidigmは、AIファクトリー規模での展開を可能にする、お客様に合わせてカスタマイズされた製品ロードマップを提供するパフォーマンス重視のNVMe SSDを製造しています。製品ラインアップには、液冷ソリューションや、世界で最も多く使用されている大容量ドライブ(122.88TBのNVMe SSD。今後さらに大容量の製品もリリース予定)などがあります。
まずは、AIライフサイクル(データ取り込み → 学習 → 展開)をエンドツーエンドでマッピングし、その上で、スループットを考慮した設計を行います。そして、計算リソースに近い場所にNVMe階層を加え、データガバナンスとMLOpsパイプラインを標準化し、推論あたりのコストやトークンあたりのコストといったユニットエコノミクス指標を採用します。
Scott Shadley(スコット・シャドレー)は、Solidigm(ソリダイム)のリーダーシップ・ナラティブ・ディレクター兼エバンジェリストであり、計算ストレージ、ストレージベースのAI、ポスト量子暗号を含む新しいストレージ技術の採用を促進する取り組みに注力しています。スコットは半導体とストレージ分野で25年以上の経験を持ち、エンジニアリングと顧客重視の役割の両方で重要な役割を果たしてきました。
セシリー・ホワイトサイドは、Solidigmの検索・コンテンツ担当マネージャーです。彼女は、テクノロジー、ライフスタイル、健康・ウェルネス関連のウェブサイトや出版物に掲載する記事を執筆しています。セシリーはこれまで、米国内外のいくつかの雑誌で編集責任者を務めたことがあるほか、他の雑誌にもライターとして寄稿してきました。